電波に乗せて


序章

 …コンコン「失礼します」 俺は重い足取りでその部屋に入った。ゼミの資料の中身が全然分からん、俺はかなりの危機感を感じていた。だからこそここに来たのだ。ホワイトボードの向こうには教授がいる、いつもの教授室。「あのー」 あの生真面目を固めたような教授が珍しく昼寝か、机に突っ伏してるよ。まぁただみているわけにもいかないので起こすことにする。揺すってみる、起きない。でもそのときに妙な違和感があった。いくら痩せているとはいえこんなにからだが固いはずない、そしておまけに…冷たい!まさかと思って脈をさぐると…やはり彼の心臓は定期的な脈動をすることを止めていた。大変だ!と思ってまず電話を手に取る。助教授や助手に連絡を取った方が良いだろうか、いやその前に人命第一。俺の手が救急車を呼ぶ電話番号を押し終わって電話がかかる。「プルルルル、プルルルル、ブツッ」「えっ?」その最後の音は電話が切れた音ではなかった。誰かが…俺を…強く殴って…視界からあらゆるものが消えた音だった。なんで?と思ったところでもうどうしようもない、俺は…もう…動けないのだから。

 「…本日もJR北海道をご利用いただきまことにありがとうございました、まもなく終点札幌です、降り口左側で6番ホームに到着いたします、お乗り換えの列車をご案内します…」 今日の車掌は新人なのか、すごくたどたどしくもよく通った声。その声で目が覚めた、体を伸ばしながら「あれは夢だったのか」というおなじみの台詞を小さくつぶやいてみた、そして窓の外に目をやるとJRタワーが目の前に迫ってきている。俺を釧路から運んできた特急はエンジンはすでにアイドリング状態、ポイントをガタガタと通過しながら道都の巨大ターミナルに飲み込まれようとしていた。


1章

 俺の名は加藤修平、ただいま工学部の3年生だ。情報系の大学に来たがプログラミングのめんどくささに気がついて電子工学科に在籍。はぁ、もう少しで研究室分属。今まで何となく大学生活を送ってきてそれなりに単位も所得してきた、あとはどうぞ希望の研究室に行けますようにと祈るばかりだ。それにしてもさっきの夢はずいぶんリアルだな〜^^;などと思いながら札幌駅の階段を下りてきた。釧路へはサークルの撮影旅行で行ってきたわけだが、「なんか寝言が面白かった」と同期の友達の佐藤寿人も言っていたぐらいインパクトが強かった。なんか「夢オチかよ」というツッコミが来そうだ。楽しい気分で帰ってきたが、第一志望の研究室に入るにはとりあえずテストの成績を良くしなきゃ…。えーと、情報伝送工学にディジタル電子回路、通信方式、電子デバイス…テスト多すぎだよ。こりゃ拓ボンやスワンと勉強するか…でもまずその前に机の片づけだな。とせっかくやる気を見せたのに机の片づけすらはかどらず最初のテスト3日前を迎える(汗)。
 「ここはこれだろ〜?」「ないわ〜」「えっ、それはこうやれば良いんじゃないかな?」俺と拓ボン(佐藤択郎)、スワン(白鳥悠介)の激論が続く、そう、テスト勉強。う〜んまずいなあ、さっきから俺の考え方はことごとく違うようだ、非常にまずい。頑張って彼らについて行くしかないか。

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